こんにちは。うりぼうです。
今日は、先日ニュースにもあがっていた「風遭難」についての記事です。
風遭難を予防する方法
風遭難とは何か
風遭難とはどういうものかご存じでしょうか。
先日、10月8日の朝日新聞デジタルのニュースにこんなものが出ました。
栃木県那須町の朝日岳(1896メートル)で7日、4人の登山者が遺体で見つかった、遭難とみられる事故。発見された登山道は、那須連山で「最も風が吹き抜ける」コースと言われる。主峰の茶臼岳(1915メートル)とともに登山経験者の間では「風による遭難が多い山」という。山小屋の関係者に聞いた。(引用:朝日新聞デジタル)
この事故の原因が風遭難と言われているものです。
風が吹いているだけで遭難?と不思議に思われるかもしれません。
風は意外にも体温を奪います。
山であろうと、普段歩くような街中であろうと、一般的に風速が1m増すごとに体感気温は1℃下がると言われています。
上記の事故で通報を受けた警察の捜索では、風速計が一時的に80mを示したと言われています。
風速1mごとに1℃体感気温が下がる、ということは、当時の体感気温はどれだけのものか予想がつくのではないでしょうか。
たとえ真夏で35℃の外気温があったとしても、そこからマイナス80℃となると、体感気温はなんとマイナス45℃にもなります。
ちょっと想像もつきませんよね。
風遭難の原因とは
風遭難の原因は、風による体温低下です。
上に書いたように、風速が増すごとに体感気温は下がり体温も奪われていきます。
風遭難の危険性
風で体温が奪われ始めても、初めはなかなか気づくことができません。
なぜかというと、実は体温が下がることと肉体疲労時の感覚は似ています。
つまり、頭では疲れたのだと思っていても、体が冷えているだけのときがあります。
低体温と気づいたとしても、登山中に集中的に暖を取ることは難しいでしょう。
体を動かすことで体温を上げることは可能ですが、一度体温が下がってしまうと平常時と同じように動くことも難しくなってしまいます。
強い風が吹く状況に出くわした場合には、体温が下がらないうちにできるだけ早くその状況から脱するようにしてください。
風遭難の予防策
風遭難の危険性がわかったので、予防できることは積極的に予防していきたいですね。
以下に予防策をまとめましたので、参考にしてください。
適切な登山ルートの選択
これは風遭難に限ったことではありませんが、自分の力量や、その日のコンディションに見合った登山ルートを選びましょう。
そんなこと言われても、実際行ってみないとわからないよ、と思うかもしれませんが、少しでも不安を感じたらやめる、周りに登山をやっている人がいれば相談してみる、など、慎重すぎるくらい慎重に考えてもよいかもしれません。
ネット検索をすると、「地図の標準時間はこれくらいだったけど実際はもっと早く歩けました」「初心者には大変と書いてあったけど全然大丈夫でした」なんて書いてあることもあります。
それは、その人の体力が平均よりあったとか、運動神経がよかったとか、たまたま運がよかったのかもしれません。
ひとたび山に入ってしまうと、病院もお店もなにもありません。
寒くても疲れても、暖かいお茶を売っている自動販売機や、風雨から体を守ってくれる建物なんかもありません。
自分の足で登ったからには、どんなに疲れてもどんなに辛くても、たとえケガをしても、自分の足で下りてくるしかないのが登山なのです。
それを念頭において、行先やルートはくれぐれも慎重に選びましょう。
天候の確認と対策
天候の確認もとても大切です。
「山の天気は変わりやすい」と聞いたことがあるかもしれませんが、そもそも天候に不安のある日に登山をすることはおすすめしません。
天気予報を細かくチェックして、少しでも不安を感じたらその日は諦める、という決断も大切です。
せっかくこの日のために休みを取って遠くまで来たんだから、多少の天候不良くらいで諦めきれない、と思うときもあるかもしれません。
でも、その無理のせいでケガをしたり、場合によっては命を危険にさらしてしまうかもしれません。
また、天気予報では好天が見込まれるような日でも、必ず雨具は持っていきましょう。
雨具は防寒着にもなります。
装備の選び方
まず、自分が必要なものを必要なだけ持っていきましょう。
荷物の重さはそのまま運動パフォーマンスに反映されます。
普通に考えればわかるかと思いますが、荷物が多ければ多いほど歩くことが大変になります。
それをかついでアップダウンのある道、バランスをとりながら歩かなければいけない道、切り立った斜面のあるような細い道、足だけではなく両手も使ってよじ登らなければいけないような道などを少なくとも数時間は歩くと考えると、できるだけ身軽に越したことはないです。
あれもこれも持っていきたくなってしまう気持ちもわかりますが、登山の荷物は自分の必要最低限で十分です。
なにが必要でなにが必要でないかがわかるまでは、他にも登山者が多く訪れるような身近な低山で感覚を養っていってください。
遭難事例から学ぶ
上にあげたニュース記事の遭難事故について、わかる範囲で調べてみました。
当日の天気図を見ると、西高東低の冬型気圧配置になっていました。
午前中はそれなりに良い天候だったようですが、午後にかけて歩いている最中に天候が急変し、強風に加えて雨も降ってきたようでした。
強風だけでも大きく体温を奪われるところに雨では、さらなる体温低下は免れなかったでしょう。
詳細はわからなかったのですが、当日の他の登山者の記録などを見てみると、強風で撤退、冬を除く3シーズン用の防寒着でも寒さを覚えた、などの記述がありましたので、遭難された方々の装備に不備があったわけでもなさそうです。
救助隊が現場まで行けないほどの強風だったことから、天候の急変がもっとも大きな原因と考えられます。
天気予報などももちろん確認されていたとは思いますが、予定外の時間に天気が動いたのかもしれません。
あくまでも推測の域を出ませんが、やはり天気予報の情報収集時にも万全の準備と細心の注意が必要ですね。
風遭難に遭った場合の対処法
山の上で強い風が吹いてきたら?
立っていられないくらいの強風が吹いてきたときには、一刻も早くその場を離れましょう。
先に進む道が強風にさらされ続けるような状況にあるときは、来た道を戻ることを考えましょう。
救助の方法
もしも、風遭難に遭ったと思われる人を発見したときには、次の対応をしましょう。
風遭難では、第一に低体温症の疑いを考えてよいかと思います。
まずは遭難者の状態を見極めます。
低体温症の症状として、
震え、意識の状態、脈と呼吸、失調
がその特徴となります。
震えがあれば、低体温症か、なりかけだと判断でき、早い段階での対応が可能です。
低体温症の震えは軽度の場合が最も強く、重度になるにつれて弱まっていくそうです。
風遭難をした時のケアとリカバリー
あまりにも風が強いと動けない場合があります。そんなときのケアとリカバリーをお話しします。
まずはとにかく体温の回復を急ぎましょう。
体温回復の方法は、
1.カロリー補給
→意識がはっきりしていて食べ物や飲み物を受け付ける場合には、食べ物を食べてもらい、暖かい飲み物を飲んでもらいます。
2.寒さから体をできるだけ離す
→地面に体が接地している場合には敷物などで直接地面に体温を奪われないようにします。衣類が雨などで濡れている場合には、乾いている衣服に着替えてもらいます。
3.保温
→ほかにも着られるものがあればできる限り着込んでもらいます。雨具なども濡れていない状態であればよい防寒着となります。また、寝袋やアルミシートなどがあれば使います。首元、手、耳や頭部など、露出しているところはすべてできる限り覆います。
4.加温
→内臓の体温を上げます。ホッカイロなどがあれば、内臓に近い部分から温めていきます。お腹、背中、胸などからです。手足などの末端はそのあとです。
風遭難現場から小屋などに避難できたとき
小屋など風を遮ることのできる場所に避難できたときも、基本的な対応は上記の対応と同じです。
カロリー補給、衣服などが濡れている場合には着替えてもらう、布団や寝袋などで保温、さらにホッカイロなどで加温、です。
小屋内を暖められるような場合にはもちろん暖めますが、避難小屋などにはそのような設備がない場合も多いです。
まとめ:風遭難を予防する方法。山の上で強い風が吹いてきたときの対処法
風遭難を予防するには、
- 適切な登山ルートの選択
- 天候の確認・対策
- 装備の選び方
が大切です。
そして、そのような準備や対策をしていても強風に遭ってしまったときには、まず第一にとにかくその場を離れることが大切です。
登山では、「こうすれば絶対に安全」ということはありません。
でも、知らないより知っていることで最悪の事態を防げることもあります。
この記事を読んだことで、「風遭難」についての知識が少し身についたかと思います。
少しずつ知識を身につけて、より安全に登山を楽しんでいきましょう。
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