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夏の奥多摩へ。東京の奥地、川苔山で味わった登山時の五感の大切さ。

体験談

こんにちは。うりぼうです。

山の天気は急変する、と聞いたことがあるかもしれませんが、今回は登山中にあった天気急変にまつわる話を。

山に限らず、どこでも急な雨などで困ることがありますが、山の中で雨に降られたときにどのようなことに困ったかの一例としてお読みください。

夏の奥多摩、川苔山へ

東京の夏は年々暑くなっている気がします。

東京だけではなく、日本全体が熱くなっているように思いますね。

そんな暑い中でも、しょっちゅう涼しい高山に出かけられる位置に住んでいない私は、気が向いたらすぐに行ける奥多摩に出かけることにしました。

少しでも標高の高いところへ行けば、森の中に行けば、多少なりとも涼しさを感じられるかなと期待して。

本で調べて、「百尋(ひゃくひろ)ノ滝」という大きな滝がある、川苔山に行ってみることにしました。

朝一の電車に乗って、奥多摩駅に着きました。

バスに乗り換えて、川苔山の登山口へ向かいます。

川苔山は、東京と埼玉の境にある山です。

沢沿いを歩けることと、滝が見れるということで人気の山だそうです。

バスを降り、少し歩くと、沢沿いの道になります。

早朝の森の中は、少し気温が下がったような感じでとても気持ちよく歩くことができます。

森の中からの視線

滝を目指して歩き続けていると、ふと視線を感じます。

大きなカモシカが、向こう岸の斜面で固まったままこちらをじっと見ています。

おそらく、沢の水を飲みに来たのでしょう。

毛むくじゃらのおじさんがこちらを見ているのかと思い、びっくりして同じように固まってしまいました。

カモシカ

カモシカという動物なのは本で見て知っていましたが、実物をこんなに近くで見たのは初めてでした。

同時に、奥多摩の野生動物の多さ、毎年起きている動物との事故などを思い出し、ドキドキしてきました。

同じバス停で下りた数人は先に行ってしまったので、周りには誰もいません。

野生動物は、こちらが何もしなければ襲ってくることはほぼない、ということなので、そっと目を逸らして前だけを向いてまた歩きだします。

運動の影響とは別に鼓動が速くなってしまっていることを感じつつ、走らないようにできるだけ速足で歩きます。

もし走ってしまって、向こうが追いかけてきたらどうしよう、と思っていました。

しばらく歩いてから振り返ると、カモシカの姿はもうありませんでした。

ほっとして、水を一口飲んでからまた歩いていくと、百尋ノ滝への案内板が出てきました。

百尋ノ滝

慎重に滝の下まで続く斜面を下りて、大きな滝のしぶきを浴びながら上を見上げます。

豊富な水量の滝です。

百尋ノ滝

滝の上の木々の間には青空が見えました。

しばらく滝を見て、すがすがしい気分になって、登山道に戻ります。

登山道は滝を離れると、どんどん深い山へと入っていきます。

いつの間にか、沢とも離れ、蒸し暑い森の中を歩き続けます。

徐々に太陽の位置が高くなり、夜露である程度冷やされていた森は高湿度地獄に変わり果てます。

ゆっくり歩いていても汗が流れ続けるので、水分を多めに摂りながら歩きます。

山頂で感じた違和感

汗だくでなんとか頂上に着くと、バスで一緒だった数名がそれぞれに散らばってお弁当を食べていました。

奥多摩の里山には、基本的に山小屋も自動販売機もありません。

日帰りでは難しい一部の山や、高尾山や御岳山のように観光地化されているようなところには、いろいろあるんですけどね。

私も、家から持ってきたおにぎりやゆで卵を食べようと座るのに良さそうな場所を探していました。

ふと、動物園のようなにおい、というか、はっきり言ってしまえば、動物の糞尿のようなにおいがしてきました。

なんとなく強いにおいがする方向をできるだけ避けて座りましたが、食事を摂りながら考えていました。

(明らかに野生動物のテリトリー内にいる…)

そういう場所にわざわざ入り込んで歩いているのはこちらなので仕方ないのですが、やはりできるだけ出遭いたくはないものです。

朝見たカモシカや、おそらくすぐ近くにいるであろうツキノワグマやイノシシなどのことを考えながら黙々と食べていると、近くに座っていたおじさんが「小さいけど今日は富士山が見えるよ。この木の隙間から」と教えてくれました。

隙間から富士山を見て、おじさんにお礼を言って写真を撮りました。

おじさんに、「この後はどこへ下るの?」と聞かれたので、下った先の電車の駅名を答えました。

「そう、僕はあっちの駅の方へ下るんだ。あっちの道もおすすめだよ。次回にでも下りてみるといいよ。じゃあ、気を付けてね。」

と、親切に教えてくれ、おじさんは私とは反対方向の道を下りていきました。

焦燥感の中の下山

いつの間にか他の人たちもそれぞれ下りて行ったようで、山頂に一人、ぽつんと取り残されたことに少し心細くなってしまいました。

なによりも、野生動物のにおいが不安を増長させます。

(さっさと下りよう。楽しいこと考えよう…下りたらなにを食べるか考えながら下りよう)

道を確認して、慎重に歩き始めます。

相変わらず蒸し風呂のような深い森の中を進みます。

空が見えないほどに青く茂った木々はじっと動かず、風が吹いてないことを語っています。

遠くで低い音が聞こえたような気がしました。

どきり、と緊張が全身に走りました。

全身を耳にして、音の主とその方向を聞き定めます。

ゴロ……ゴロゴロ…

もしかして、雷の音?

さっきまでは遠くの富士山が見えるほどの晴天だったはずですが、空がよく見えないので現状がわかりません。

ゴロゴロ…ゴロゴロ…

音が近づいてきているように思えます。

自分の足音を邪魔に思ってしまうくらい、全神経を周囲の音に集中させますが、それでもまだ状況がわかりません。

ザーー!

ゴロゴロ、ドーン!

急に大粒の雨が降り出し、雷の音も間近になってきています。

慌ててザックから雨具を出しましたが、モタモタしているうちに全身ずぶぬれになりました。

それまで蒸し風呂のようなところを歩き続けていたので、まあ夏だしいいか、と開き直りました。

折り畳み傘をもっていたので、レインウェアは着ずに傘だけさして歩きました。

傘をさして山を歩いていることが不思議なのとおもしろいのとで、なんとも楽しい気分で雨の中を歩いていました。

高い木々に囲まれているので、雷が自分めがけて落ちることもそうそうないだろう、と思いました。

ボツボツと大きな雨音が傘に当たります。

ザーザーと木々に当たる雨はまるでスコールのようです。

しばらくして、ふと、あることに気づきました。

雨以外の音が聞こえない。

雨のせいで周りのにおいがわからない。

これでは、何がいても気配がわからない。

楽しい気分が一気に恐怖に転じてしまいました。

(周りの気配を読みづらくなったということは、こちらの気配も伝わりづらくなっているのではないだろうか…)

一人で平日に人の少ない山へ行くようになってから、目で見る情報以外にも、音やにおいなどに頼って周りの気配を読むということが知らず知らずのうちに身についていたようです。

それに驚いたとともに、雨という普段とは違う条件の下では、なんとなく使っていたけど実は頼りにしていた五感のいくつかがまったく役に立たなくなるということに愕然としました。

今日のように初めて歩く場所でのこれは、恐怖感も倍増です。

(早く…早く下りないと…!)

目しか情報を取れる感覚がない状態なので、何度も周りを見たり後ろを振り返りながら、周りに何もいないことを確認しながら必死で歩き続けます。

初めて来た山だったこともあり、下山の道が異様に長く感じました。

スコールのような雨が、降り始めた時と同じように急に止みました。

傘を閉じましたが、手に持ったまま歩きました。

弱々しいけど、いざ野生動物と出遭ってしまったら、これで脅かすくらいしかないな、と思っていました。

ようやく車道に出た時には、体の疲れを上回る精神的な疲れでへとへとでした。

結局野生動物に遭遇することもなく、なんとか無事に戻ることができました。

湿度の高い森の中では雨が止んでも服が乾くわけもなく、雨でずぶぬれになったままでした。

このまま電車に乗ったら迷惑だよなぁ、と思っていましたが、駅に着くころには再び8月の強い日差しが容赦なく降り注ぎはじめ、駅で電車を待っている30分の間に服もザックも傘も全て乾いてしまいました。

電車に乗り込むと、安心したのか急にお腹が空いてきたので、帰りにカレーを食べて帰ることにしました。

今回の教訓は、

  • 野生動物の出現情報を確認すること
  • 天気予報を確認すること

です。

クマ目撃などの最新情報は、ウェブなどで調べられるようになっています。

登山に行く場所の最近の状況を知っていると危険を避けられることもあります。

夏場のスコールのような急な雨はなかなか避けられませんが、雨が降るとどれだけ情報が遮断されてしまうかを知る良い機会とはなりました。

山の中では、自分の全身の感覚が情報源になっているということにも気づくことができました。

できれば、晴れている日に行けるに越したことはないんですけどね。

うりぼう

登山歴15年ほどの40代女性です。年間10~20回ほど山を歩いてます。

これまでに、200座前後登りました。(同じ山含む)

関東在住なので関東近郊の山に登ることが多いですが、たまに長野、岐阜、新潟辺りまで行くこともあります。

時間と休みの不規則な介護福祉士です。その不規則さをフル活用して平日の山を堪能しています。

登山が初めての方に山の楽しさを伝えるために、このサイトで情報を発信しています。

ぜひ読んでもらって、楽しい登山をしてください。

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