こんにちは。うりぼうです。
今日は、初めて行った2500mの世界、八ヶ岳の蓼科山での失敗談を。
高尾山でよちよちと歩いていた私が、ついに八ヶ岳デビューした時のおバカな話です。
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持ち物、靴、よし!
八ヶ岳は、山梨県と長野県の境にある山塊の総称です。
ずっと、八ヶ岳という山があるのかと思っていましたが、調べてみると八ヶ岳という名前の山はありませんでした。
「八ヶ岳」にはその名の通り「八つの山がある」、または「八つ(たくさん)の山がある」、「八百万の神様がいる」などの意味があるそうです。
標高の低い関東平野に生まれ育った私には、自分の足で歩いて海抜2000mを超えてしまうなんて未知の領域でした。
初の八ヶ岳ということで、比較的初心者向けと言われる山の中から八ヶ岳北端に位置する蓼科山に決めました。
7合目から登り、日帰りで下りてくるコースです。
とはいえ、関東からは日帰りの難しい場所なので、事前に下調べをたくさんしました。
前日に近くの宿に泊まると、朝から登ることができてその日のうちに無理なく下りてこられるようです。
念入りに計画を立てて、持ち物チェックを何度もしました。
靴も絶対に忘れないように玄関に出しておきます。
あとは天気が良いことを祈るのみです。
前日は白樺湖畔に素泊まり
朝早い時間から登れるように、前日に蓼科山の近くにある白樺湖畔に宿を取りました。
白樺湖は、人口の湖だそうです。
1940年代に、農業用のため池として造られたそうです。
ため池ができると観光産業も盛んになり、1950~1960年代には観光地として栄えたそうです。
1970年代以降は、通年で自然に触れられるリゾート地として多くの人が訪れたとのことです。
そんな白樺湖に到着したのは、午後遅い時間でした。
近くにお店を探しましたが、コンビニは歩いて行ける距離にはありませんでした。
旅の不便さもたまにはいいか、と考えることにして、部屋に備え付けてあった電気ポットでお湯を沸かし、家から持ってきていたドリップコーヒーを淹れました。
夕飯は、諏訪インターを出てすぐの、おぎのや諏訪店で買ってきた「峠の釜めし」です。
冷めてしまいましたが、駅弁は冷めてもおいしいのが良いところです。
東京ではめったに食べられないおぎのやの釜めしに、旅に来ているんだ、という非日常を感じます。
山の日暮れと目の前の白樺湖を窓から眺めながら、明日の天気が晴れ予報なのを確認します。
非日常の夜が終わることが名残惜しいように感じつつも、明日の登山に備えて早めに寝ることにしました。
晴天の朝
夜が明け、カーテンを開けると青空が広がっていました。
山々がキラキラと輝いて見えます。
体調もよし。
今日は頑張ろう!
気合も十分です。
電気ポットで沸かしたコーヒーを飲んで、まだ見ぬ世界にわくわくしながら身支度を始めます。
宿の従業員の方にお礼を言って、車に乗り込みます。
蓼科山までは、12kmほど。車で20分ほどです。
途中にコンビニを見つけたので、朝ごはんにおにぎりを買いました。
昼は、この日のために買ったカップ麺を家から持ってきてあります。
山ではカップ麺の汁は飲み干すこと、絶対にその辺に捨ててはいけません、と事前に調べた情報の中にあったので、しっかり飲み干せるように朝は軽めにします。
お湯を沸かすバーナーも持ってきたし、水も十分持っています。
おにぎりを食べて、ナビを頼りに蓼科山7合目駐車場へと向かいます。
途中、気圧で耳が詰まったので、ごくんと唾を飲み込んだり、生あくびのようなことをして耳のつまりを解消しました。
いよいよ高いところへ来ているんだ、と実感します。
蓼科山7合目
駐車場はたくさんあり、蓼科山がとても人気のある山であることが伺えます。
大きなバスも止まっており、ツアーなどで来る人たちもいるようでした。
車を止めて、登山靴を履き直し靴ひもをしっかり締めます。
ザックの中身は、家でも何度も確認済です。
軽くストレッチをして、のんびりと歩き始めます。
7合目は、標高1900mということなので、2531mの山頂までは標高差にして600mほど。
高尾山が標高差400mほどなので、その差は1.5倍程度です。
コースタイムは4時間弱、という情報があったので、ゆっくり歩いて休憩をたくさんとっても、午後の早い時間には戻ってこられるでしょう。
森の中には陽が差し込んで、夜露の残っている足元の草がキラキラと光を反射させています。
登山道もはっきりしており、たまに出てくる道標もわかりやすく何も不安なく歩くことができます。
途中、大きな岩だらけの場所もあり、関東の低い山々との様相の違いを見ました。
大きな岩が連なっている道を登っていくのはなかなか骨が折れました。
低山をてくてく歩くのとは違い、山登りをしている、という実感がありました。
たくさんの登山者の後ろ姿を見ながら、必死で登ります。
2531mの山頂へ
ゴロゴロと岩の続く急登が終わると、急に空が広くなったような気がしました。
ふと周りを見て、膝が震えました。
周りには膝くらいのハイマツという高山植物がたくさん生えていましたが、高い木がないのです。
ここで変な転び方をしたら、岩とハイマツの間を転がり続けて死んでしまう、と思いました。
森の中では絶対にそんなことにはならないので、高山の恐ろしさを体感しました。
それにしても、高い木が育たなくなる森林限界というものを初めて見ました。
画像なんかで見るのと、自分の目で見るというのはやはり全然違います。
緊張しながら、すぐそこにある山頂を目指します。
山頂は、一面岩がゴロゴロ転がっている不思議な場所でした。
蓼科山が火山であることがよくわかる、溶岩の固まった岩です。
岩と岩の間にそっと身を寄せている小さな植物たちを踏まないようにしながら、山頂を歩きました。
あいにくガスが出てきてしまい、山頂は真っ白な霧の中になってしまいました。
それはそれで、幻想的な物語の世界に迷い込んだようでなんだか気に入りました。
登っている間は気づかなかったのですが、標高が高いのでずいぶんと気温も下がっているようです。
ザックからフリースと防風のパーカーを出して着込みます。ネックウォーマーもつけました。
下調べと準備を念入りにしておいてよかった、と思いました。
これが関東に戻れば、うだるような真夏の暑さの時期なんだと思うと、ものすごくぜいたくな経験をしにきたなぁ、と思いました。
お昼のカップ麺
緊張しながら険しい道を登ってきたからか、無事に山頂に着いてしばらくすると、猛烈な空腹感が襲ってきました。
山頂に山小屋があったのですが、平日のど真ん中だったためか営業していませんでした。
小屋の前にあるテーブルとベンチを借りて、私の両親と同じくらい年齢であろうご夫婦が説明書らしき紙を見ながら霧と冷たい風の中ガスバーナーをいじっています。
私もその近くのテーブルとベンチを借りて、ガスバーナーを取り出しました。
私は家やわざわざ高尾山に持って行ってバーナーの使い方を練習してきています。
ザックからカップ麺を取り出し、慣れている風を装ってガスバーナーでお湯を沸かします。
まあ、誰も見ていないのですが。
気圧差でパンパンに膨らんだカップ麺を開けてお湯を入れ、3分待ちます。
その時、大変なことに気づいてしまいました。
箸がない!!
ここは標高2500mです。岩だらけで木も生えていない山の上です。
山小屋もタイミング悪く閉まっています。
ザックの中をひっくり返して、奇跡が起きて箸が湧いて出てきていないか、せめて代わりになるようなものはないか、と一人でパニックです。
準備はあんなに念入りにしておいたつもりだったのに…。
箸を思いつかなかったとは…。
もう3分経ってしまう…。絶望です…。
「山にゴミを捨ててはいけません。カップ麺は汁まで飲み干しましょう」
の言葉が、頭の中でぐるぐると回っています。
結果、カップ麺はしっかり食べて、汁まで飲み干しました。
一体どうやって食べたのか。
カップ麺のふたを細く折り曲げて、かきこむような恰好で食べました。
幸い、近くにいたバーナー初心者のご夫婦は、私の異様なカップ麺の食べ方には気づいていませんでした。
おいしいなぁとか、あったかいなぁとか、山で食べているんだ、という醍醐味みたいなものは一切感じる余裕なんてありません。
ひたすらにスピード重視のカロリー摂取タイムです。
口の中を火傷しながら必死で、このギャグみたいな状況を早く抜け出さなきゃ!誰も来ないで!見ないで!ということしか考えていませんでした。
なんとか食べ終わりましたが、食後のコーヒーを優雅に沸かすような気分ではなくなってしまい、荷物を片付けて早々に下ることにしました。
今回の教訓は、
箸!忘れないで!絶対!
です。
カップ麺などを持っていく場合限定ですが。
箸のことばかり考えながら7合目の登山口まで下りてくると、空がまた晴れてきました。
山頂の寒さも、夢でも見ていたのかな、と思うくらいの夏の日差しが戻ってきました。
さて、帰ろう。
とりあえずは初の八ヶ岳登山をなんとかクリアできたご褒美に、SAで冷たいソフトクリームを食べました。
ソフトクリームは箸もいらないので安心です。
家に帰るとすぐに、ザックの底に割り箸を数本入れました。
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