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平日に登山。一人で楽しむ奥多摩。のつもりだったけど…

平日体験談

こんにちは。うりぼうです。

山の楽しみ方は、人の数だけあると思います。

自然と触れ合いたい人、綺麗な景色を写真に撮りたい人、仲間とわいわい楽しみたい人、一人静かに日常から解放されたい人、それぞれの楽しみ方がありますよね。

今日は、そんなことに関する山での困った話を。

感情労働者、平日の奥多摩へ

「普段、人と近い距離で触れ合うような仕事をする人は、休みの日にはできるだけ仕事とは真逆のことをすると良い。そのような時間を持って精神を安定させてくることで、また良い仕事ができる」と、大学時代の先生が言っていました。

具体的には、医療職、教育関係、介護職、受付業務やコールセンター、販売員やサービス業など、人を直接相手にする仕事なんかが当てはまるようです。

感情労働、という言い方をされます。

相手に対してポジティブな働きかけをすることで報酬を得る労働のことだそうです。

そのような職種についていると、知らず知らずのうちに自分の感情を押し殺す癖が身についてしまい、休みの日や仕事から離れた時間でも、相手に合わせたりして疲弊してしまうそうです。

そんなことから、感情労働者の端くれである私も、山へ行くことの精神安定効果を実感してきていたころでした。

一人気ままに、平日の奥多摩へ。

約束はないので時間を見ても焦ることは一切ありませんし、一人なので人の状態をあれこれ気にすることもありません。

どんなにやらなくて良いと言われても、人と過ごす時間にはどうしても相手が不快なじょうたいではないか、とか、欲しいものはないか、とかに考えが勝手にいってしまうのです。

そういう意味で、一人の時間は本当に貴重な時間です。

平日の里山は、人がほとんどおらず一人の時間をたっぷり使って運動もできて、と私にはいいことづくめです。

今回は、前にも一度行った奥多摩の川苔山に行くことにしました。

野生動物との遭遇などの不安はもちろんありますが、それでも人が少ないことの方が私にとってはメリットが大きいです。

朝一のバスには、私以外には男性がそれぞれソロで2名乗っているだけでした。

静かな山歩きができそうです。

「こんにちは。お一人ですか?」

バスを降りて、男性2名が先に歩いていくのを見送ってから、ゆっくり歩きだしました。

沢沿いの道を、前回見たカモシカがまたいるかも、と怖い反面なんとなくまた見たいような気持ちで、周りを気にしながら歩きます。

しばらく行くと、沢をわたる場所に男性がかがんでいる姿が見えました。

(あ、しまった、追いついちゃったな…十分に時間はあけたはずなんだけどな…)

相手が止まっているので、しかたなく抜かして通り過ぎることにします。

「こんにちはー」と山の挨拶をして、狭い道を男性を避けて通ろうとしました。

「こんにちは。お一人ですか?」

見たらわかると思うけど…などと心の中では斜に構えつつ、つい職業病が出てしまい、うっかり愛想よく笑顔で返事をしてしまいました。

男性は嬉しそうに「僕は、ボランティアで奥多摩のガイドをたまにやっているんです。いくつに見えますか」と若干面倒な質問が返ってきます。

いくつでもいいよ…といじわるな気持ちになりつつ、「わからないです…60代、くらいでしょうか?」と答えると、また男性は嬉しそうに「こう見えて80超えてるんですよ!」と得意気です。

そして、かがんでいたのは山草を取っていたんだ、これはおいしい、茹でてマヨネーズをつけるといけるから、君もぜひ取りなさい、と半ば強引にビニール袋を渡されてしまいました。

職業病である「いい人ぶり病」の私は、笑顔で「へぇ、食べられるんですね!ありがとうございます!」なんて爽やか風な返事をしながら、内心はしぶしぶ山草を引っこ抜きます。

山草取り

「もっとたくさん持っていきなさい。この辺はいつでもたくさん生えるから」と言われて、心の中でため息をつきながら笑顔で草をビニール袋に入れていると、小さな石碑のようなものが目に入りました。

【〇〇君、ここに遭難す】

…誰か死んでる場所じゃないか。

日付はかなり昔のものでしたが、確かに遭難と書かれています。

何があったのかはわかりませんが、そんなところでよくわからない草を抜いて持って帰ること自体、なんだか背筋が寒くなるような気持ちになりました。

自称ボランティアガイドのおじさんは、「今日はガイドの仕事がなくて、暇だったから山に来たんだ。よかったらご案内しますよ。普段はグループを連れて歩くことが多いけど、君はラッキーですね。ガイドを独り占めできるから」と勝手なことを言い始めます。

「いや、前にもここには来たことあるので…」と、重度のいい人病を患っている私はかなりの勇気を振り絞って言ってみたのですが、全くもって伝わらなかったようです。

「女性が一人で山を歩くと怖いこともあるだろうからね。奥多摩は動物も多いから」と、あくまでも同行する気です。

諦めて、どうせならこれまでの山の体験談でも聞いてやろうと思い、一緒に歩くことにしました。

というか、道は一つだったのでどんなに早く歩いても限界があります。

普段から山歩きをしている人を振り切れるほどの体力は私にはないですし、遅く歩けばきっとそれに合わせてくれてしまうでしょう。

一緒に歩く以外の選択肢がなかったのです。

「あれは、○○、こっちに□□の花」

ガイドらしく色々と教えてくれます。

肝心の体験談は特におもしろい話もなく(失礼)、記憶に残りませんでした。

「そろそろ女性はトイレタイムかな?僕は離れたところで待ちますから、ごゆっくり。そこのくぼみで皆さん用を足されていますよ」

と、ご丁寧に歴代のトイレポイントまで案内してくれました。

(さて、この後どうしようか)

トイレと偽って先に歩きだすことも考えましたが、追われているように山道を駆け上がるわけにも行きません。

山頂まで行ってしまえば、下る道はいくつかあったはずです。

おじさんが下りる道を先に聞いてから、自分はそれとは別の道に下りよう、と決めました。

本当にのんびり、10分ほど時間をかけて、「そろそろ大丈夫かい?」とおじさんが声をかけて下の斜面から上がってきました。

心のこもっていないお礼を、とても心がこもっているように言い換えてから、また一緒に登り始めます。

長い道中何を話していたのか、今となっては本当に思い出せません。

ようやく山頂に着き、お昼の時間となりました。

おじさんはやはり、一緒にお昼も食べるつもりでいました。

まあ、一緒にお昼を食べて、ついに話題は下山のことに。

「僕はあちらに下るんですが、よかったらこの後も一緒に下りて差し上げましょうか?」と聞かれます。

こちらから聞く前に下山路を教えてくれたので、「あー、残念ですが私は○○駅に下る予定で来ているので…。ここまでご一緒していただいてありがとうございました」とお礼を言いました。

おじさんは、満足げに、そして下山が別なことを少し寂しげに挨拶を返してくれました。

その様子を見て、少し心が痛みました。

なんとも言えないモヤモヤとした気分で山を下りました。

単独登山者の心の中と、必要な覚悟

本当は、正直に「日常から離れたところで一人の時間を持つために来たんだ、親切にしてくれるお気持ちはありがたいけれども、山にはそういう目的で来る人間もいるんだ」ということを伝えた方が良かったのかもしれません。

山にくる人間がみんなして知らない相手にも挨拶をするのは、その昔相手が物の怪の類とか山賊なんかではないということをお互いに確認するため、という話があります。

それがいつしか山の習慣、山の常識として広まったのだと思います。

近距離ですれ違う山道では、相手が無言だと緊張が走るのも事実ですしね。

それを、山に来る人間はみんな明るく友好的、と捉えられてしまうと時には困ったことにもなるわけです。

そして、わたしのような「いい人ぶり病」の人間も、ふらっと山を歩いていたりするのです。

それでも、一切話しかけるな、なんてことは思いませんし、「どこから登ってきたの?この後はどこへ下りるの?」などの会話は普通にします。

問題なのは、こちらが望んでいないことを望んでいると勘違いされてしまい、頼んでもいないのにあれこれとお世話を焼かれてしまうことだったりなのです。

基本的に、一人で山なんかに行く人間は、全部を自分一人でどうにかできる程度のところにしか行きません。

それに対して、頼まれない限りはお世話なんて必要ないですし、万が一ケガをしたり遭難しても一人で来た自分の責任です。頼まれるまでは放っておいていいのです。

一人で歩いている人たちは、みんなそれをわかっていて、覚悟のうえで一人で行っていると思うのです。

逆にそれができないうちは、一人で行くことは控えた方がよいと思います。

私も数々の失敗をしてきましたし、最初の頃は無謀なこともしてきました。

失敗を運よく切り抜けることができてから、いろいろと調べて学び、最悪の場合を想定してもこれなら自力で帰ってこれる、と思える場所にしか一人では行かないことにしています。

山を歩くほどに、一人での登山の危険を実感しています。

でも、上に書いたようにどうしても一人で歩きたい理由があるのです。

それでもし死んでも文句は言いませんし、遭難しても、助けてくれとは言いません。

そうならないように、過不足のない準備と無理は絶対しない登山を今後もゆっくりやっていこうと思います。

それでも細かなハプニングはつきものですけどね。

しかし、みんながみんな覚悟のうえで歩いているかと思うと、そうではない場合もあります。

何もわからずによく調べもしないまま、体力だけで歩いているような人を見かけることもあります。

そんな人は、きっと経験者の方から見ればすぐにわかるんだろうなぁ、と思います。

ニュースでたまに見る、夏場の富士山の状態なんかはその典型例です。

軽装で、体力だけで登ってしまって救護所に駆け込んだりしてしまう人たちが毎年必ずいますよね。

そのような、よくわからないまま危ないことをしそうになっている人に気づいた時には、一言声をかけるだけでも違うかもしれません。

私も、もしかしたら危なっかしく見えたのかもしれませんしね。

山だから、と分けて考えることはなく、普段の生活と同じように、相手が困っているか、助けが必要か、必要だとしたらどんな助けが必要か、を相手にまず確認できたらいいな、と思います。

今回の教訓は、

  • 無理をしてまでいい人ぶらない
  • 一人で山へ行くときは全て自己責任

です。

いろいろと辛辣なことも書いてしまい、お気を悪くされた方がいらしたら申し訳ありません。

決して誰かを傷つけたり貶めたりするつもりではなく、単独で歩いている人間の心の内を少しでも知ってもらえたら、という気持ちで書きました。

今回登場した自称ボランティアガイドの方は幸いにも善意の人でしたが、これがもしも何事か悪い考えを持っている人だったら、と思うとぞっとします。

対応の仕方についても、正直どうすれば正解なのか今でもわかりません。その時その時で変わることでしょう。

まあ、山にわざわざ悪いことを考えてくる人などいないとは思いますけどね。いろいろと非効率でしょうし。

もし、不安に思われてしまった方は、身を守るものを持っていると少しは安心感につながるかと思います。

野生動物から身を守ることもできる、クマよけスプレーなどが売られています。

もちろん人間に使ったら大変なことになりますが、いざというときの護身用として。

単独で歩いている姿を見かけると心配になってしまうこともあるかもしれませんが、山で一人の時間を楽しんでいる人間もいるんだなぁ、変わっているなぁ、なんて知ってもらえたら嬉しいです。

うりぼう

登山歴15年ほどの40代女性です。年間10~20回ほど山を歩いてます。

これまでに、200座前後登りました。(同じ山含む)

関東在住なので関東近郊の山に登ることが多いですが、たまに長野、岐阜、新潟辺りまで行くこともあります。

時間と休みの不規則な介護福祉士です。その不規則さをフル活用して平日の山を堪能しています。

登山が初めての方に山の楽しさを伝えるために、このサイトで情報を発信しています。

ぜひ読んでもらって、楽しい登山をしてください。

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